コア切込みによる残存プレストレス推定手法
プレストレストコンクリート(PC)構造物においては、プレストレスの健全性が重要で、その状態を把握することは、PC構造物を維持管理するうえで極めて有用です。ところが、既設構造物の中には、設計図書が保存されていないものや、設計どおりの応力状態にないことが疑われるものもあります。本手法は、既設構造物の「プレストレスを知りたい」を可能にした調査技術です。
本手法の原理
弾性体に応力が作用している場合、切り込みなどによってその応力を部分的に解放してやると、ひずみや変形が生じます。その物理量によって応力を推定する方法は、応力解放法とよばれ、従来から種々の材料に用いられてきました。本手法はこの原理をコンクリート部材に応用したものです。
本手法の概要
同様の手法は、これまでにも提案されてきていますが、特殊な機械装置や解析を必要とするため、容易には行えません。しかしそれ以上に問題なのは、コンクリートの乾燥収縮やクリープといったコンクリート特有の経時ひずみの影響で、「知りたいプレストレス」を上手く取り出せていなかった点です。本手法は、長年にわたる乾燥収縮およびクリープに関する研究の知見を活かし、これらの影響を排除することを可能にしたものです。
手順はいたって簡単です。まず、「プレストレスを知りたい」箇所に、応力方向とその直角方向にコンクリート表面ひずみゲージを貼り付けます。次に、コンクリートコアカッターによって浅い切込みを入れ、応力解放後のひずみを測定し、提案式にそれらのひずみを代入することで測定箇所の有効応力が算定されます。
手順はいたって簡単です。まず、「プレストレスを知りたい」箇所に、応力方向とその直角方向にコンクリート表面ひずみゲージを貼り付けます。次に、コンクリートコアカッターによって浅い切込みを入れ、応力解放後のひずみを測定し、提案式にそれらのひずみを代入することで測定箇所の有効応力が算定されます。
特長
- 特殊な機器材を必要としません。
- 浅い切込みを入れるだけなので構造物に負担をかけません。
- 2013年制定 土木学会コンクリート標準示方書[維持管理編]にもプレストレスの調査方法として紹介されています。
- 日本コンクリート工学会の論文賞(2010年度)を受賞しています。
- 特許(第5095258号)を取得しています。