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工法の概要

ニューマチックケーソンとは

ニューマチックケーソン工法(Pneumatic caisson method)のpneumaticは空気のcaissonは函(はこ)を意味します。日本では「潜函」工法とも呼ばれています。
地上で鉄筋コンクリート製の函(躯体)を構築し、躯体下部に作業室を設けここに地下水圧に見合った圧縮空気を送り込むことで地下水の侵入をふせぎます。
作業室内で地山を掘削・排土して、躯体を沈下させることで、橋梁や建造物の基礎として、また、下水ポンプ場、地下調整池、シールドトンネルの立坑、地下鉄や道路トンネルの本体構造物として幅広く活用されています。

工法の原理

ニューマチックケーソン工法の原理
左図にニューマチックケーソンの原理を示します。 コップを逆さまにして、水の中に押し込んだ状態のように、空気の圧力によって水の侵入を防ぐ原理を応用したものです。 ニューマチックケーソンは下部に気密な作業室を設け、作業室に圧縮空気を送り込んで地下水の侵入を防ぎ、地上と同じようなドライな状態で掘削作業を行うことが出来ます。

ケーソン設備

ニューマチックケーソン設備 ニューマチックケーソン設備

工法の歴史

工法の歴史
ブルックリン橋
工法の歴史
エッフェル塔
(世界)
ニューマチックケーソン工法は今から約170年前フランスで開発され、ニューヨークのブルックリン橋やパリのエッフェル塔など、欧米で橋梁基礎や建築物の基礎として、数多く採用されています。
永代橋
永代橋
万代橋
万代橋
神戸港第7・8突堤
神戸港第7・8突堤
(日本)
我が国においては、約90年前に旧白石の創業者である白石多士良が米国よりニューマチックケーソンの技術を導入し、関東大震災により倒壊した隅田川の永代橋、清洲橋等の復旧工事に採用したのが最初でした。
新潟市を流れる信濃川に架かる万代橋は我が国にニューマチックケーソンの技術が導入された4年後に施工された橋梁です。
この万代橋は、築35年後の1964年6月に発生した新潟地震において、付近の橋梁が倒壊し通行不能でしたが、被害は軽微で唯一自動車の通行が可能でした。
神戸港内の第7・8突堤の基礎はニューマチックケーソンであり、1995年1月の阪神淡路大震災において、付近の岸壁が壊滅的な被害にあったにも拘わらず、この岸壁の被害は軽微でした。
このことから、ニューマチッケーソンの優れた耐震性能が再評価されております。

工法の特徴および優位性

ニューマチックケーソン工法は以下の優れた特徴・優位性を持っております。

  • 躯体剛性が高く、鉛直方向・水平方向の荷重に対し高い支持機構を有する
    →耐震性に優れている
  • 他工法と比較し、一般的に基礎平面積を小さくできる
    →施工時占有面積を小さくできる。狭隘地施工が可能
  • 仮土留を必要とせず、沈下させたケーソン躯体がそのまま地下の構造躯体(内空容積)となる
    →地下空間を最大限に利用、敷地利用率の向上
  • 複雑な内部構造もケーソン沈設作業と同時に構築可能
    →工程短縮が可能
  • 躯体構築を常に地上で行うとともに、地盤を直接確認しながら正確な沈設ができる。また、基礎地盤の支持力を直接載荷試験で確認することが可能
    →高品質の確保、高精度の確保、近接施工に対応
  • 地下水を低下させない
    →井戸枯れや周辺地盤を乱さない、近接施工に対応
  • 仮設土留杭壁などの不要な根入れを必要としない
    →地下水脈を遮断しない(地下ダム化の防止)
  • あらゆる土質(粘性土、砂質土、玉石混り砂礫、岩盤)に対応でき、ドライ施工のため地中の障害物にも容易に対応できる
    →掘削土は普通土扱い、リサイクル利用が可
  • 水上施工(海上、河川、湖)に確実に対応できる
    →特別な補助工法が不要
  • 無人掘削システム・ヘリウム混合ガス呼吸システムの開発により、大深度開発を確実にサポートできる
    →省力化、工程短縮、コスト縮減、安全性の向上
  • 施工プロセスが一定(構築→掘削→構築)しているとともに、掘削と構築の併行作業を導入することができる
    →工程の確実性が高い、工程短縮が可能

ここ数年、各種の地下構造物のニーズは、大深度化・大規模化・複雑化してきておりますが、地下構造物の設計から施工に至るまでの様々な課題をニューマチックケーソン工法が解決します。

他工法との比較

ニューマチックケーソン基礎と鋼管矢板基礎との比較

最新ニューマ技術を考慮した基礎工法選定一覧表

ニューマチックケーソン基礎と直接基礎との比較

最新ニューマ技術を考慮した基礎工法選定一覧表

ニューマチックケーソン基礎とオープンケーソン基礎との比較

最新ニューマ技術を考慮した基礎工法選定一覧表

ニューマチックケーソン工法と開削工法の比較

最新ニューマ技術を考慮した基礎工法選定一覧表
地下施設構造物の築造方法としては,一般的には「土留工による開削工法」が採用される。
しかし,開削工法における土留工が地盤の安定に対して,上記表の①~④の条件となる場合は,開削工法と比較し「ニューマチックケーソン工法による築造」がその工法の特徴から,工期工費を含めて優位となるケースが多くなる。
【ニューマチックケーソン工法が優位となるケース】
  • ①は掘削深度(H)=20~25m程度以上から対象
  • ②③のように薬液注入や地盤改良の必要性がある場合は掘削深度(H)=10m程度からでも可能性あり
  • ④はディープウエルの採用の可否,採用の場合は排水処理費や影響対策工を含めた比較となる
また開削工法では掘削深度(H)が深くなるにつれて土留壁は高い剛性と強固な土留支保工が必要で,特に掘削深度が30mを超えてくるとその傾向は顕著となり,工費工期が急激に増加する。
ニューマチックケーソン工法は「無人ケーソン工法」の採用により,掘削深度増加に伴う掘削単価増加が少なく,全体工期は構築工程に支配されることが多いため影響が少ない。特に大型の地下施設構造物ではこれらの点からニューマチックケーソン工法の採用が増加している。
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